PMP 試験に AboveTarget で合格したので勉強方法などをまとめる (2023/06)
▼ はじめに
こんにちワールドイズマイン. 株式会社 Belong で Engineering Manager をしている七色メガネです。
2023 年 6 月に PMP 試験を受けてきまして、Above Target で合格しました。
マネジメントを始めた時からいつか取りたいと思っていた資格だったので、ひとつ夢叶った感があります。えらい。
せっかく合格したので後続の同志のために何か情報を残したいなあと思い、今筆を握っています。
何を書くか悩んだのですが、試験勉強を始める前に「PMP 合格体験」などのキーワードで情報を検索したとき、
「すごく時間がかかりました」とか「3 回目で受かりました」とか「PMP のメリットはこれだ!」とか微妙に役に立たない感想記事が多くヒットして泣いたのを思い出しました。
ので今回はその時の悲しみを踏まえて、「何を勉強したか・何が有用だったか」「どんなタイムラインで勉強したか」にフォーカスを当てて記録をしたいと思います。
よろしければご興味あるところだけでもご覧ください。
▼ 使用した教材と所感
今回の受験にあたって使用した主な教材は以下の通りです。
- 対試験有用度 ( 主観 )
- その教材が試験に役立ったかどうかの
主観
評価。◎ / ⚪︎ / △ の三段階で評価。
- その教材が試験に役立ったかどうかの
- 完了率
- 私がその教材をどれだけ活用したか。教材を一周終えること、あるいは読了することを以て 100% とする。
それぞれの教材所感は次の通りです。
なお本記事で記載する有用度などはあくまで、個人の使用感に基づいて評価した私の個人的な感想です。書籍それぞれの価値を否定するものではなく、また私が所属する企業としての見解でもありません。
悪しからず。
🔸 PM 教科書 PMP 完全攻略テキスト PMBOK ガイド第 7 版対応 ( 主観有用度: △ )
PMBOK 7 版に対応した解説書です。と言いつつ、6 版の内容を薄めて、少しだけ 7 版やアジャイルの内容を加えた、というレベル感です。
PMP 試験は 2021 年 1 月に改訂されて、今までの 6 版準拠の知識重視問題から、シチュエーション問題やアジャイルに関する問題が多く含まれるようになりました。
その意味では「6 版の知識を薄めて全体的に学ぶ」というこの書籍のスタイルは間違っていないと思いますし、試験を受けた後になって考えてみればここで扱われているスコープを学ぶだけでも良かったのかもしれないと思っています。
ただ知識を体系的に学ぶという意味では 6 版の内容もアジャイルの内容もカバーしていると言うには中途半端な感が否めず、受験勉強に用いる唯一の書籍としておすすめはちょっとしづらいかなと言うのが正直なところです。 また 180 問の問題集もついているものの解説レベルが怪しく、私は使用しませんでした。
試験前にさらっと全体感を確認したい、ぐらいにはちょうど良い書籍だったかなと思っています。
🔸 図解入門よくわかる 最新 PMBOK 第 6 版の基本 ( 主観有用度: ◎ )
PMBOK 6 版に対応した解説書です。2021 年の PMP 試験改定前の書籍なのですが、それだけに 6 版の知識については満遍なく詳細に学ぶことができます。私は 6 版の知識はこれを何周もして定着させました。
試験を終えてみた後の感想としては、 6 版に準拠した PMBOK に関する純粋な知識問題は少なかったので完全な知識インストールは必要なかったなと思いつつも、ただ実際に業務に使えるようなテクニックなどは私は 6 版から借用しているので、その意味でも読んで良かったと思える書籍です。
🔸 PMBOK 第 7 版 ( 主観有用度: △ )
最新の PMBOK です。リーダーシップのスタイル、PjM としての考え方など精神的な点での指南が多く、個人的にはとても好きな書籍です。
ただ PMP の試験のために通読する必要があるかというと、悩ましいです。読んでマイナスになることはもちろんないですが、ここに記載している内容を暗記していないと答えられないような問題は試験には出ないので、最短経路を目指すのであれば省いて良いものかもしれません。
ちなみに私はここから勉強を始めたので Amazon で買ってしまいましたが、PMP 試験申し込みをする際に PMI 会員になると、無料で PDF ダウンロードできるようになります。
https://www.pmi.org/pmbok-guide-standards/foundational/pmbok
🔸 PMBOK 第 6 版 ( 主観有用度: ◎ )
一つ前のバージョンの PMBOK です。以前のものとはいえ、この書籍の有用性は今の PMP 試験でも全く衰えていないです。と言うのも PMBOK 6 では具体的なプロジェクトマネジメントの方法を詳説しているのですが、 PMBOK 7 ではそれらに全く触れないような形になっています。つまり PMBOK 6 を更新したものが PMBOK 7 、ではなく、PMBOK 6 とは異なる新しい観点で PjM を捉え直したのでが PMBOK 7 といえます。
そして現在の PMP 試験は依然として PMBOK 6 の知識を試験スコープに入れているので、何かしらでこの書籍の内容に触れるのは必須になっています。
ただこの書籍、ひたすらでかいです。通読を目指すなら日本語版でも 1 ヶ月以上はみた方が良いと思います。
私は基本、前述の [ 図解入門よくわかる 最新 PMBOK 第 6 版の基本 ] で学習しつつ、よくわからないところがあった時だけ原本の PMBOK 6 を紐解く、と言うような方法でこの書籍と付き合いました。
これも PMI 会員であれば PDF が無料ダウンロードできます。
https://www.pmi.org/pmbok-guide-standards/foundational/pmbok
🔸 アジャイル実務ガイド ( 主観有用度: ◎ )
PMI (PMP 試験実施元) が出版しているアジャイルの解説本です。アジャイルに関する一通りの知識を学ぶことができます。
知識自体はこれを読まないと絶対にダメと言うほど突出した内容が記載されているわけではないのですが、ウォーターフォールとアジャイルの折衷に関する考え方や、Disciplined Agile やクリスタル手法など普段あまり聞かないような方法論についても言及があるので、よほどのことがない限り読むことをお勧めします。
特に PMP 試験においてはウォーターフォールとアジャイルのハイブリッドな運用に関する問題が半分程度を占めるため、そのコンセプト理解に大きく役立ちます。
https://www.pmi.org/pmbok-guide-standards/practice-guides/agile
🔸 PMI 倫理規定 ( 主観有用度: ○︎ )
PMI が公開している PjM 実務者の倫理規範集です。数ページの短い文書です。
これを知らなきゃ解けない問題がある、と言うわけではないです。が、PMP の問題には知識だけで正答を絞りきれないものがあり、そんな時の選択基準に役立つことがあります。
例えばこの倫理規定には
[ 私たちは、グローバルなプロジェクトマネジメント・コミュニティに所属する実務者として...(中略)...自分の経歴、経験、スキル、資格に見合った任務のみを引き受けます。 ]
と言う一文があります。
もし試験で「自分の力を超えていることが明らかなプロジェクトがあるが、自身の成長のために積極的にチャレンジする」と言う選択肢があったら、これは倫理規定に照らし合わせたら不適切、と言うことができます。
余談ですがこういった絶対の正解が無い問題に対する一貫した PMI のスタンスを指して [ PMI イズム ]
と呼ぶことがあり、「PMI イズムを理解しなければ PMP 試験には合格できない」なんていうことが言われたりしますね。
🔸 PMP Certification Exam Prep Course 35 PDU Contact Hours/PDU ( 主観有用度: ◎ )
Udemy で提供されるプロジェクトマネジメントに関するオンライン研修です。PMP 試験を受験するための条件の一つとして、[ 35 時間以上の公式なプロジェクトマネジメント研修の受講 ] がありますが、このコースはそれを満たすものになります。
他のコースは試していないので比較的な感想は述べられないのですが、過不足の無い良いコースだったと思います。英語音声のみですが日本語字幕がつけられます。
ただ、このコースに限ったことではないのですが、ひたすら長いです。39 時間分あります。PMP 受験前の最初の試練です。
原価だと高いので、Udemy のセールを狙って購入しましょう。
https://www.udemy.com/course/pmp-certification-exam-prep-course-pmbok-6th-edition/
🔸 PMP 問題集/PMP Practice Test Exam 2022- As per latest ECO ( 主観有用度: ◎ )
Udemy で提供される PMP 試験用の問題集です。PMP は過去問を提供していないので、演習をしないので臨むか、誰かが作成した想定問題集をこなして臨むかの二択になります。( 厳密に言えば PMI が出している問題集もあるようですが、あまり話を聞かないですね )
問題集はこれを含めて 3 種類試しましたが、その中ではこの問題集が最も納得感があり、実戦に近かったように思います。
難易度は、私は本番より高いと感じました。この試験で 60 点以上を取れたなら本番試験でも合格を十分狙える域に達しているのかなと思います。
全て英語ですが、Google 翻訳しながらやったので特に不便はなかったです。2 周目は原文で解いてみて、本番テストの日本語が崩れていた時に原文で解くための練習も行えました。
https://www.udemy.com/course/pmp-practice-test-2019-pmbok6/
🔸 PMP 問題集/Bonus Set: PMP Exam Simulator 2023 (150-Qs) ( 主観有用度: ○︎ )
これも Udemy で提供される PMP 試験用の問題集です。
個人的には、前述の問題集よりはちょっと解説に納得感が持てない + 問題がよく理解できないところがあったので 1 周するにとどまりましたが、十分に試験対策になるものだと思います。
https://www.udemy.com/course/pmp-exam-situational-question-practice-test-200-q-pmbok6/
🔸 豆検 ( 主観有用度: ◎ )
PMP 試験むけの練習問題を提供している月額課金制の web サービスです。基礎編と合格編の 2 つがあります。
基礎編は用語に関する一問一答の向きがあり、PMP 試験の本番想定ではないです。ただ長大な PMBOK の内容を理解度チェックには大いに役立つので、しっかり学習時間を取れる見込みがあるのであれば取り組むことをお勧めします。
合格編はシチュエーション問題がほとんどなので、PMP 試験に近いです。が、おそらく 2021 年以前の知識重視傾向にあった時代の試験傾向に寄っており、現在の PMP 試験対策としてこの問題集 1 つで乗り切れるかというと、ちょっと不安なところがあります。しかしこれも PMBOK (特に 6) の知識定着を測るにはとても良い問題集です。
アプリではないものの、スマホから取り組めるのも良いところです。またランキング制度があるのもちょっとだけモチベーションにつながります。 余談ですがランキング 10 位になりました。
https://pmana.jp/pc/pm3600.html
▼ 学習期間と時間の使い方
総学習期間としては概ね半年を注ぎ込みました。が、実際に試験向けの勉強をしたのは賞味 1 ヶ月半ほどです。雑ですがグラフに起こしました。
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私は最初に PMBOK 7 の英語版から入りました。(英語学習を兼ねていました)
英語が出来るわけではなかったのと、まだエンジンが入っていなかったので、ここで 3 ヶ月ほど消費しました。ただここを英語で通過していたことでこの後の英語での Udemy 研修や問題集に抵抗がなくなったので、結果的にはよかったかなと思っています。 -
PMBOK 7 を読み終えそうな頃から Udemy のオンライン研修を開始しました。前述の通りこれは合計 39 時間 ( 途中の設問などはこの時間に含まれない ) もあるので、とにかくここを突破するのに時間がかかりました。
ゆっくり取り組んだ (途中で飽きたのもある) ので、これも通算 3 ヶ月くらいかかりました。 -
研修の終盤頃から、やっと PMP 試験向けの勉強を始めました。順番としては 豆検で基礎知識を固める → Udemy 問題集、と言う感じで進めました。
Udemy 問題集を始めた最後の 1 ヶ月くらいは 1 日 3 時間くらいの注力具合で取り組んでいます。今数えてみたら、試験向けの勉強は通算 1.5 ヶ月程度かけていました。
と言うことで全体としては半年かかっているのですが、PMBOK 7 はまるっと省いてもよかったこと、オンライン研修を飽きずにスピーディに進めれば半分くらいで乗り越えられたかもしれないと考えると、全体として半分くらいに圧縮できたかもしれません。
▼ 試験所感
試験当日記はネットに結構転がっていたので詳述はやめておきますが、ざっくりとだけ。
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試験時間は 230 分、問題数は 180 問、60・120 問目終了時点で休憩 2 回を任意で挟める、メモ用のホワイトボードを渡されて臨む、と言う形式でした。 ホワイトボードにはタイムスケジュール (70 min * 3 + バッファ) だけ書いて、ほぼ置物として使用しました。
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日本語で申し込んだので問題文は日本語で表示されますが、英語切り替え機能があります。日本語訳がおかしいな、と思ったら英語に切り替えることができます。 が、念の為にぐらいで何度か切り替えたものの、普通に日本語訳でほとんど理解できました。ネットでは「日本語が崩れていてわからない!」っていう声もありましたが、精度が上がっているんですかね。
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休憩は全て取得、問題は全て 2 周の見直しを入れてもスケジュール時間通り、くらいで進みました。
準備をそこそこしたおかげか、試験そのものは思ったよりも難しいとは感じませんでした。Udemy の問題集の方が難しかったです。
試験終了ボタンを押すとすぐに合否発表です。試験結果詳細は会場を出る時にプリントアウトしてくれます。
試験を受けた数時間後には合格メールも届きました。
▼ この資格をとってよかったか?
私の所属している Belong 社は自社サービス企業なので、資格をとったから案件が増える! みたいな変化はありません。が、私はこの資格をとってよかったと思っています。PjM として行うべきベストプラクティスを知れたこと、意識できていなかった、意識すべき領域が可視化・明文化されたことなどが理由です。
例えば要件の管理ですが、体系的に学んでこなかった私は「ステークホルダーにやりたいことをヒアリングして、文書にまとめて、それに基づいて開発を進めること」ぐらいに思っていました。今までの仕事も、ごめんなさいですがそうやってきました。
ただ PMBOK を知った今では、少なくとも次のことをするべきだなと考えることができます。
- やりたいことの一覧として、要求事項をヒアリングなどを通して洗い出す。→ 要求事項一覧の作成
- 要求事項のうち、何をやるべきか・やらないべきか・やることが出来るかを検討する。
- 「やること(概要)」「作るもの(成果物)」「やらないこと(除外事項)」などを整理し、合意を取る。 → スコープ記述書の作成
- スケジュールやタスクを段階的に洗い出し、計画を段階的に洗練させていく。
全ての場合で上記のやり方が正しいとも思いませんが、まず最初に考えるべき拠り所としての在り方を学べた気がしています。PMP 取得後に取り組み始めたプロジェクトでも、早速上記のプロセスを試してみています。
また意識できていなかった領域はたくさんありますが、特に「ステークホルダー・マネジメント」については刮目させられた気がしています。
「ステークホルダーは大事」なんてことは当然分かっていましたが、PMBOK ではしっかり踏み込んで、例えば以下のような点に言及します。
- 全てのステークホルダーがプロジェクトに等しく関心を持っているわけではない。関心レベルを整理・分析し、それに応じて適切な関わり方をするべきである。
- ステークホルダーは常に変化する。ステークホルダーの認識・管理・更新はプロジェクトを通して常に行われなければいけない。
- ステークホルダーによってリスクの許容具合も、報告に使用して欲しいと考えているレポートツールも、全く異なる。それぞれのステークホルダーに合わせたコミュニケーションを行う必要がある。
意識できていなかった点に意識を向けることが出来るようになったと言う点でとても得るものがあったと感じています。
まとめると、PjM におけるベストプラクティスを色々学べたと言う点で、PMP 試験を受けてよかったと思っています。今の所価値を感じているのは学習過程と得た知識自体であって、資格本体ではないですが!
▼ おわりに
今回は PMP 試験に関する勉強方法や感想についてまとめました。 得た知識ベースで書いた記事もいくつかあるので、よろしければご覧ください。
- PMBOK 式・スコープを確立するまでの方法について!
- バッドプラクティスからミニウォーターフォールを考える
ここまで読んでいただきありがとうございました.
ではサヨウナラ.
弊社 Belong では一緒にサービスを育てる仲間を募集しています。 もし弊社に興味を持っていただけたら エンジニアリングチーム紹介ページ をご覧いただけたら幸いです。