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ニューヨーク出張で取り組んだこと — グローバルなプラットフォーム共通化

2026-04-10

はじめに

こんにちは。株式会社 Belong の プラットフォームチームで SRE をしている shigwata です。

2026年3月、2週間ほどニューヨークへ出張してきました。 今回の出張では、グローバル展開を進める上で直面した「別 Org 間でのプラットフォームリソース共有」という課題に取り組みましたので、その知見を共有します。

背景:アメリカでの採用が本格化する前に

Belong は現在、米国の中古スマホ卸売企業 We Sell Cellular(以下、WSC)との協業を通じてグローバル展開を進めています(詳細はこちらの記事をご覧ください)。

エンジニアリングチームとしても WSC 側の体制を整えるべく、現地でのエンジニア採用が本格化しています。私たちのプラットフォームチームはこれまで、主に日本のプロダクト開発を支える基盤整備に注力してきました。

  • GCP 上のインフラ基盤
  • 社内共有用の GitHub Actions / Reusable Workflow
  • 再利用可能な Terraform modules
  • 社内ライブラリ

これらは belong-inc という GitHub Organization(以下、Org)に集約しており、日本側のエンジニアは当然のように使っています。

新しく WSC 側に入ってくるメンバーがすぐに開発を始められるよう、同じゴールデンパスを使える環境を先に用意しておく必要がありました。

難しかったこと:別組織・別ドメインという壁

技術的に一番悩んだのが、組織の分離でした。

日米でサービスや組織が異なるため、Google Workspace のドメインも GitHub の Org も別々になっています。

GitHub Enterprise
├── belong-inc     ← 日本側(Org レベル SAML SSO 設定済み)
└── wesellcellular ← 米国側(Org レベル SAML SSO 設定済み)

同じ GitHub Enterprise 配下であれば、リポジトリを internal visibility にすることで Enterprise 全体に共有できるはずでした。

ドキュメントと現実のギャップ

GitHub の公式ドキュメントには「Org レベル SAML の場合、internal リポジトリへのアクセスに SAML 認証は不要」と書かれています。しかし実際に試してみると、WSC メンバーが belong-inc の internal リポジトリにアクセスしようとすると、belong-inc の SAML SSO 認証を求められてしまいました。

ドキュメントの記述は「同一 Org 内のメンバー」を前提にしていると思われます。cross-Org アクセスでは別の Org の SAML ポリシーが適用される——これは実際に試して初めてわかったことでした。

検討した選択肢

アプローチ問題点
belong-inc Org で internal 公開WSC メンバーが belong-inc の SAML 認証を求められる(実測済み)
WSC Org 内にミラーリポジトリ自動同期の仕組みが必要、PR がしにくい
forkbelong-inc Org の fork 禁止ポリシーにより不可
Git submodule / package registry設定が複雑

解決策:「SAML なし」の共有 Org を新設する

調査と試行錯誤の末にたどり着いた答えが、SAML を設定しない共有 Org を Enterprise 配下に新設するという方法でした。

GitHub Enterprise
├── belong-inc      ← Org レベル SAML あり(変更なし)
├── wesellcellular  ← Org レベル SAML あり(変更なし)
└── shared-platform ← SAML なし(新規作成)
    ├── github-actions (internal)
    └── terraform-modules (internal)

shared-platform Org は SAML を設定しないため、Enterprise メンバーであれば認証なしでアクセスできます。WSC メンバーも belong-inc の SAML を通ることなく、共有リソースを利用できるようになります。

SAML 構成と cross-Org アクセスの関係

belong-inc と WSC はドメインが異なるため、Enterprise レベルで単一の SAML を設定することができず、各 Org が独立して Org レベルの SAML を設定しています。この構成と cross-Org アクセスの関係を整理すると以下の通りです。

SAML 構成cross-Org で internal リポジトリにアクセスできるか共有 Org 新設の必要性
Enterprise レベル全 Org が同じ IdP で認証されるためアクセス可能不要
Org レベル相手 Org の SAML 認証を求められる必要

私たちは Org レベル SAML の構成であるがゆえに cross-Org アクセスの問題に直面し、SAML なしの共有 Org を新設するという解決策にたどり着きました。

移行の流れ

  1. shared-platform Org を Enterprise 配下に新設(SAML は設定しない)
  2. github-actions をベアクローンで shared-platform にミラーコピー
  3. リポジトリ内の内部参照(belong-inc/github-actionsshared-platform/github-actions)を書き換え
  4. WSC 側のワークフローから shared-platform/github-actions を呼び出す検証
  5. Terraform modules、社内ライブラリも順次移転予定

得られたもの

プラットフォーム共通化の実現に向けた土台づくり

技術的な成果として、WSC 側のリポジトリから shared-platform の社内共有 GitHub Actions を呼び出す検証が完了しました。Terraform modules のミラーコピーも済んでおり、社内ライブラリの移転も順次進めていく予定です。

これにより、米国側エンジニアが入社した初日から、日本側と同じゴールデンパスで CI/CD を動かし、同じ Terraform modules でインフラを構築できる状態を目指せるようになりました。また、shared-platform に write 権限を付与することで、日米どちらからでも共有リソースに PR を送り、共通プラットフォームを一緒に育てていけるようになります。

「プラットフォームを共通化する」という言葉は簡単ですが、組織の分離・SSO の壁・内部参照の書き換えなど、実際にやってみると想像以上に泥臭い作業の積み重ねでした。今回の出張でその最も難しい部分を突破できたことで、共通化の土台が整いました。

プラットフォームチームの活躍機会が広がる

今回の取り組みを通じて、プラットフォームチームの役割が変わりつつあると感じています。

これまでは日本のプロダクトを支える基盤チームでしたが、共通プラットフォームの整備が進むことで、日米のプロダクト開発全体を支える組織へと活動範囲が広がります。具体的には:

  • 共通プラットフォームの設計・運用をリードするポジションの確立
  • 日米横断のアーキテクチャ意思決定への参画
  • グローバル規模の技術課題(マルチリージョン、コンプライアンス等)への取り組み

プラットフォームエンジニアとして、より大きなスケールの課題に挑戦できる環境が生まれつつあります。

米国チームとの継続的な連携の必要性

日本と米国はタイムゾーンが約14時間異なるため、リアルタイムで会話できる時間帯は限られています。テキストや非同期のやりとりだけでは共有しきれないコンテキストも多く、「なぜそう設計したのか」「どこを変えると何が壊れるのか」といった暗黙知は、同じ場所で一緒に手を動かすことで初めてスムーズに共有できます。

共通化はこの出張で完了したわけではなく、ここからが本番です。残りのリソース移行や、現地で採用されるメンバーの受け入れ——複雑な課題を前進させるには、定期的に現地を訪問して対面でコンテキストを合わせる機会が重要だと感じています。

ニューヨーク観光

せっかくニューヨークにいるので、業務時間外にはしっかり観光もしてきました。

ブロードウェイ「アラジン」

本場のミュージカルを生で観るのを楽しみにしていました。子供も大人も楽しめる演出で、堪能しました。

自由の女神

フェリーから見る自由の女神は、小さいながらも存在感がありました。

アメリカ自然史博物館

映画「ナイト ミュージアム」の舞台としても有名なこの博物館、実際に訪れると展示のスケールが桁違いです。モアイ像が普通に廊下に立っていたり、恐竜の骨格標本が吹き抜けの天井まで届くほど大きかったり。

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タイムズスクエア

昼間のタイムズスクエアに立ってみると、写真や映像で何度見ても現物には勝てないと痛感しました。ビルの壁面を埋め尽くす巨大なデジタルサイネージが、昼間でもこれほど鮮やかに映えるのかと驚きます。あの圧倒的な情報量と人の多さは、実際に立ってみないとわかりません。

Nintendo New York

個人的なハイライトはここかもしれません。マンハッタンのど真ん中にあるニンテンドーの直営店で、思わず買ってしまったのが自由の女神の格好をしたピカチュウのぬいぐるみ。ニューヨーク限定品で、NY らしさとポケモンらしさが絶妙に融合した逸品です。お土産に迷ったらぜひ。

pikachu

右手にはヒトモシ。左手の本にはアンノーン文字で Unova と書いてあります。ニューヨークが舞台のポケモン(イッシュ地方)にちなんだデザインですね。

現地での暮らし

2週間の現地生活で「これは便利だな」と感じたことも紹介しておきます。

移動はすべてキャッシュレスで完結

オフィスへの移動に使ったロングアイランドの電車(LIRR)は、アプリでチケットを購入してそのまま乗車できます。改札もなく、車内で車掌にアプリの画面を見せるだけ。地下鉄(サブウェイ)はさらにシンプルで、クレジットカードをそのままタッチするだけで乗れます。最近、日本でも始まりましたが、ICカードを別途チャージする必要がなく、旅行者にも優しい仕組みでした。Uber タクシーも Uber Eats も、スマートフォン一台で生活がほぼ回る便利さを実感しました。

宿泊は Airbnb

ホテルではなく Airbnb で部屋を借りました。2週間という長期滞在では、キッチンや洗濯機が使えるのが非常に助かります。近所のスーパーで食材を買って自炊したり、Uber Eats で頼んだり、地元のカフェでコーヒーを買ってきたり。ホテルに泊まるよりも、より現地の生活に近い体験ができ、ご近所さんとの交流もできました。

時差ボケ対策はメラトニン

日本との時差は約14時間。初日から全力で動く必要があったので、現地のドラッグストアでメラトニンを購入しました。日本では医薬品扱いで手に入りにくいですが、アメリカでは一般的なサプリメントとして普通に売られています。おかげで時差ボケをほぼ感じずに乗り切れました。

帰国時の JFK 空港——TSA に3時間

帰りの JFK 空港では、TSA(アメリカの空港保安検査)で3時間以上かかるというハプニングがありました。ちょうどこの頃、TSA のスタッフ不足がニュースになっていたのですが、まさに当事者として体験することになりました。保安検査のレーンが少なく長蛇の列が続く中、新しいレーンが解放された瞬間、待っていた客から拍手が起きたのはアメリカンだなと思いました。出国は余裕を持って空港に向かうことを強くおすすめします。

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駐在メンバーとの交流

現地に駐在している日本人メンバーとの時間も、出張の大きな収穫でした。

ウェルカムピザパーティー

到着してすぐ、駐在メンバーがウェルカムパーティーを開いてくれました。本場ニューヨークのピザを囲みながら、現地の生活事情や仕事の話を聞けたのは非常に助かりました。遠く離れた場所でも日本人同士で助け合える環境があると、長期海外出張でも心強さが違います。

テスラの自動運転を体験

駐在メンバーの車がテスラで、移動中に乗せてもらいました。日本でもテスラ自体はよく見かけますが、自動運転機能は日本では利用できません。ハンドルから手を離し、アクセルもブレーキも踏まずに車が走り続ける感覚は、実際に体験してみないとわからないものでした。

まとめ

プラットフォームチームの仕事は、開発者が「当たり前のように使える」基盤を作ること。ニューヨークで現地のメンバーと一緒に作業しながら、Belong のグローバル展開が着実に進んでいることを肌で感じた出張でした。日米どちらのエンジニアにとっても、その「当たり前」を届けられるよう、引き続き取り組んでいきます。

弊社 Belong では、グローバルなプラットフォーム基盤の構築に興味のあるエンジニアを募集しています。 もし弊社に興味を持っていただけたら <エンジニアリングチーム紹介ページ> をご覧いただけたら幸いです。

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