生成AI時代のマネジメントを探究する――EMゆるミートアップ vol.10 参加レポート
こんにちは、こんばんは!Belong で Engineering Manager をしております、takashi です!
2025/7/7 に銀座で開催された「EMゆるミートアップ vol.10 〜生成AI時代のマネジメントを探究しよう〜」に参加してきました。
神奈川から東京に引っ越してきたばかりの私にとって、こうした研修イベントにリアルで参加できるようになったのは本当に嬉しいことです。
今回のテーマは「生成AI時代のマネジメント」。ChatGPT や Copilot、Claude Code、Cursor、Gemini CLI などの生成AIツールが急速に普及する中で、
どのようにエンジニアリングマネージャーとしてチームをサポートしていくべきか?
この問いに対して、50名前後の参加者が集まり、熱い議論を繰り広げました。
こうした研修イベントへの参加については、Belong では支援してくれる制度があります。
学び続けることを大切にする企業文化があるからこそ、私も安心してこのような機会に参加できています。
会場とスポンサーへの感謝
会場は、株式会社LayerXさんの素晴らしいオフィスを提供いただいておりました。50名以上が入れる開放的なミーティングルームで、巨大プロジェクターが3台設置された、まさに学びと交流の場にふさわしい空間でした。
また、今回は株式会社mentoさんがスポンサーされておりました。株式会社mentoさんは、マネジメント向けAIソリューションSaaSを提供する会社で、チームコンディションやケア対象の把握、半期でのマネジメントレポート作成などを支援するサービスです。こうしたツールの存在自体が、まさに「生成AI時代のマネジメント」を象徴していると感じました。
多様な視点から見る生成AI活用
イベントは5名のLT発表から始まりました。それぞれ異なる企業、異なる立場から、生成AI時代のマネジメントについて語られ、その多様性に驚かされました。
(publicなイベントでは無いため仔細ご容赦ください!公開情報はこちら)
最初の発表者は、全社的なAI活用推進において「安全なレール」を敷くことの重要性についてでした。月50ドルまでの個人利用予算を設定し、「AIファースト」の会社を目指す一方で、情報セキュリティの観点から入力データの分類(個人情報レベル、業務情報レベル)を明確にし、AIサービスごとに使用可能なデータを制限するルール作りを行っているとのことでした。
続く発表者は、ピープルマネジメント領域でのAI活用について具体的な事例を紹介しました。仔細は非公表とのことでしたので記載できませんが「発散と収束過程では活用できるが、熱量は人の役割」という言葉が印象的でした。
三番目の発表者は、チーム育成の観点から興味深い視点を提供してくれました。忙しいチームにおける「ゆとり消失」の悪循環を断ち切るため、CursorなどのAIツールを活用した開発効率化に取り組んでいるとのこと。特に「メンバーがCursorに相談してみたんですけど」といった発言が自然に出てくるようになったときの喜びを語られていました。成功体験を積んだ人から自発的に利用が拡大していく様子は良い組織学習の形だと感じました。
四番目の発表者は、チーム内でのAI活用格差について言及されました。GitHub CopilotからCursorへ、さらにClaude Codeへと移行する中で、チーム全員の活用度合いにばらつきが生じていることを課題として捉え、週次での共有会やモブプログラミング会を通じて、チーム全体のレベルアップを図っているとのことでした。「心理的安全性がないと、学びもノウハウも共有されない」という指摘には、私自身も深く頷きました。
最後の発表者は、興味深いことに「敢えて生成AIを使わない業務」について語られました。特に振り返り面談での情報収集においては、AIの得意な情報収集能力を使わず、手作業で行っているとのこと。「ポジティブなサプライズを作る」ことを大切にし、メンバーが書いていない部分を拾い上げることに価値を見出している姿勢に、マネージャーとして学ぶべきことが多いと感じました。
深掘りディスカッション:変わること・変わらないこと
LT発表の後は、テーブルディスカッションの時間です。私が参加したテーブルでは「マネージャーの仕事で変わること・変わらないこと」について深く話し合いました。
参加者は、EM,PM や PdM、エンジニアなど多様な職種の方々でした。議論の中で特に印象的だったのは、「感情面や暗黙知の取り扱い」についてです。
「AIに取り組ませるのは表層的な部分で、感情を込める作業は代替できない」という意見から始まり、「人と人のコミュニケーションでは、言葉と感情がずれている場合があり、その微妙なニュアンスをAIが拾えるかは疑問」という洞察まで、様々な観点が共有されました。
特に文化やコンテキストに依存する情報の処理については、まだまだAIの苦手分野だということで意見が一致しました。「暗黙のコンテキスト」を理解し、適切に活用することは、人間、特にマネージャーにとって重要なスキルであり続けるでしょう。
極論として「人の価値は、人に対して時間を使うということにある」という発言も出ました。様々な文化において、愛というものは「人に対して自分の人生を使う」という営みとして理解されている。これは人間にしかできない価値創造なのではないか、という哲学的な議論にまで発展しました。
「何を評価すべきかはAIではなかなか代替できない」という指摘も鋭いものでした。情報収集はAIでもできますが、その情報をどう解釈し、どう評価するかは、まだまだ人間の役割という見解が強いようです。
また、トム・デマルコの『ピープルウェア』で語られる「触媒」という概念についても話題になりました。表面上の成果だけでなく、なぜかチーム全体の調子が良くなる、という現象の裏には、チーム内で化学変化を起こし、メンバー同士の相互作用を促進する重要な役割を暗黙的に果たしている人の存在があるとされています。
こうした「見えない価値」をAIが拾えるかどうかは、まだまだ課題が多いというのが共通認識でした。
他テーブルの洞察も興味深い
他のテーブルでの議論も、それぞれ興味深い論点を提供してくれました。
AI時代のエンジニア採用について議論したテーブルでは、「AI活用している人・していない人の二極化が進む中で、同じ評価基準で良いのか」という問題提起がありました。また、面接プロセスにおけるAI活用についても、「エンジニアはまだ売り手市場なので、アトラクトが重要。AIで画一的に面接してもアトラクトにはならない」という現実的な指摘がありました。
安全なAI活用をテーマにしたテーブルでは、「ルールがないと情報漏洩が怖いが、起きたことに気づけないのが一番怖い」という危機感が共有されました。権限管理やガイドライン作成の重要性について活発な議論が交わされたようです。
AI時代の育成・評価について議論したテーブルでは、「ジュニアエンジニアの成長機会をAIが奪ってしまう可能性」や「AI活用度をどう評価するか」といった、実践的な課題が話し合われました。「成果さえ出ていれば活用度合いは関係ない」という意見がある一方で、「職種によってAIの効果は異なる」という指摘もあり、一筋縄ではいかない複雑さが浮き彫りになりました。
私たちはどう向き合うべきか
今回のイベントを通じて、生成AI時代のマネジメントについて多くの気づきを得ることができました。
まず、AIの活用は私たちの仕事をより効率的で創造的なものにする機会だということです。
特にマネージャーにとって重要なのは、「人間にしかできない価値」を見極め、そこに時間とエネルギーを集中させることというのは共通の認識で浮かび上がってきました。感情的なコミュニケーション、文化的コンテキストの理解、暗黙知の活用、そして何より「人に対して時間を使う」ということの意味を、改めて考え直す必要があるでしょう。
また、チーム内でのAI活用格差についても、チーム全体で学び合える環境を作っていくことが重要です。前述したように心理的安全性の確保が大前提となりますが、それだけでなく、成功体験を共有し、チーム全体のレベルアップを支援する仕組み作りが重要です。
Belongでは、このような学び合いの環境を積極的に整えています。毎週LLMについて語り合える場を設け、エンジニア以外のメンバーにも生成AIについてオンボーディングする場を提供しています。また、様々な利活用アイデアを共有し、発信・推進していける環境を構築することで、チーム・組織・会社全体のAI活用スキル向上を支援しています。
心理的安全性については、手前味噌で恐縮ですが、以前にも詳しくブログで取り上げたことがあります。生成AI時代においても、この原則の重要性はますます高まっていると感じています。
最後に:学び続ける文化の価値
今回のイベント参加を通じて、改めて「学び続けることの価値」を実感しました。技術の進歩が加速する中で、私たちマネージャーもまた、常に新しい知識やスキルを身につけていく必要があります。
Belong では、こうした学習機会への参加を積極的に支援する文化があります。単に費用的な支援だけでなく、学んだことを組織に持ち帰り、チーム全体のレベルアップに活かすことが期待されています。
私自身も、今回学んだ内容を自分のチームに持ち帰り、生成AI時代のマネジメントについて、より深く考え、実践していきたいと思います。
もし、こうした学習文化に共感し、一緒に成長していけるチームで働いてみたいと思われる方がいらっしゃいましたら、 ぜひ Belong のエンジニアリングチーム紹介ページをご覧いただき、カジュアル面談やご応募してください!私たちは、学び続ける人、挑戦し続ける人を心からお待ちしています。
次回は、ぜひ皆さんと一緒に研修を受けられることを楽しみにしています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました! それではまた!